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Cut-UP/Collaborate

『愛しの佐分利信』

■愛しの佐分利信・第一話

  • ムカシの話、エレベータに乗ったらね、一緒に乗ってるおばさん達が喋ってんのよ。
  • 「あの人あの人、漫才師の、いとしこいしのどっちだったっけ?」って喋ってるんで見たら、
  • 「5万円10万円運命の別れ道」がお馴染みの夢路いとし・喜味こいしのお兄さんの方の、いとしさんがボーっとしているのよ。
  • 「ああ、こいしさん、こいしさんだあ」って、まだおばさん達がやってると、突然、背中の方から
  • 「お客さん方、あちらにおりますのが兄のいとし、私が弟のこいしでございます」って、渋い声に一喝されたのよ。エレベーターには、いとしこいし両師匠がいたのね。ビックリしたわあ。
  • で、佐分利信はどこだって? それはまた次回ね 。
    (続く)
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  • ■愛しの佐分利信・第二話

  • 「びっくりしたなぁ、もう!!」
  • 突然背後から、手を挙げて横断歩道を渡ながら座布団を運んできた松崎真に、デンスケ劇場と同じメークをした三波伸介は驚きを隠せなかった。
  • 仕方なく枕元にいつも用意してあるノギスとポラロイドカメラを使って、真を撮影することにしたのだが、部屋の中はさすがにいささか暗く、ボヤけた写真しか撮影することが出来なかった。どうせならば徹底的にやってやろうと考えた伸介は、ヘロインの中毒症状をごまかすために多量に飲んでいた、カリフォルニアワインのガロン瓶を窓に投げつけた挙げ句、カーテンにマッチで火をつける。
  • 「♪も〜えろよ、もえろ〜よ〜♪」
  • 伸介は「俺はモンタレーのジミ・ヘンドリックスだ!!」と自己陶酔している。しかし、厳かな時間は長くは続くはずもなかった。せっかくの聖なる炎を消火しようとやってきたのは、あのやかましい男なのだった。
  • 「ちゃっら〜ん!!!!!!」
    (続く)
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  • ■愛しの佐分利信・第三話

  • 「ちゃっら〜ん!!!!!!」
  • 地蔵菩薩の「ワン、ツー、スリー」の掛け声に応えるこん平の声は、三途の川の水面を震わせる。しかしそれは水茎を象形した文字に遠く及ばず、こん平、遂に言霊を失ったのか、死線にて昏迷しながら、彼は自分の決め台詞が何故に「ちゃっら〜ん」なのかを思い出そうとしていた。
  • 昭和三十三年春、根岸の海老名家の門を叩いた彼の背に負われた米俵、その米俵の藁の一把に結ばれた、小さな銀色の鈴が奏でるきらめく音、その揺らぎの響きと気付いて、こん平、思わずおのれの痛めた声帯を呪う。
  • まさに「ちゃっら〜ん」も魂の叫びとなりて、八重洲口の銀鈴を震わせ共鳴するは「おれの魂の叫び、聞いてくれへんか」と梅田花月に十数年も地縛され続けているアナーキーと誰がカバやねんロックンロールショーの出鱈目コピーバンド、紳助バンドの箍の外れた叫びという、このリアリティ。
  • 再び人魚姫に成り損ね、絶望の影差す魂はクロスロードでゴドーを待てば、怪路の日和も有り哉なんて、こん平、記憶のヒダから取り出した鈴の音思い、「すずう、すずう」と家なき子の名を呼べば、便所の火事のヤケクソか悪魔は此処唯今召喚せり、鈴々舎馬風が厳粛に現れる。
  • 「バフー!!!!!」
    (続く)
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  • ■愛しの佐分利信・第四話

  • 「バフー!!!!!!」
  • 強烈な爆風が襲いかかってきたのだ!
  • バックライトに照らされた巨大なシルエットは、「愛と誠」の謎の"ゴリラ"を思わせて、現れたのは鈴々舎馬風。つまりはキックボクシングのリングアナだった。
  • 間髪を入れずに流れ出す怪しい笛の音、それはムエタイの試合前に流れる神聖な時間、静粛な踊りのための調べである。
  • しかし真空の時にあまねく者が佇む暇も許さずとしてか、馬風の背後からスルスルと滑るように現れ、まるでジャッキー・チェンの酔拳と見間違うようなフラフラとしたステップを踏む男を見て、こん平も観衆も、その眼が釘付けになったのである。そこには巨大なイチモツを携え、悠然とツインタワー立ちするハリー・リームズの姿があった。
  • 青春のセピア色のページには必ずやハリーが立っていた。今、目の前に伝説の勇姿があり、そして立っているのだ。業火の中、固唾を飲みながら感動に打ち震える観客。
  • しかし何やら様子がおかしい。燃えさかる炎に向かって勢いよく放射を始めた彼であったが、どうも伝家の宝刀カルピスウォーターでは非ずと、日吉ミミでさえ即答出来そうな、この臭気は、まさしく糖尿病患者のアンモニア臭。そう、彼のタワーは既にディープ・スロートされたディックではなかったのだ。彼は巨大なホースを引っ張って消火活動に勤しむ小便おじさんなのであった。
  • 「しょうか、しょうだったのか!」
  • ここに来て、こん平はようやく自分を取り戻すことが出来たのである。しかし、もう時は遅し。飛び散る火の粉とアンモニアの霧を浴びながら、会場は轟音の火柱を上げて崩れ落ちていったのである・・・暗転。
  • 4時間後、完全に焼け崩れた火災現場を訪れる者があった。野次馬の見物よろしく黄色い着物を着た一人の男がやって来る。
  • 「やん、バカ〜ン、フフ〜ン!!!」
    (続く)
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  • ■愛しの佐分利信・第四話までのあらすじ

  • 最近何かと噂の処刑エレベーターの中、関西弁の口さがない婦人らを前に一喝する老人が一人、その塩辛声の主とは、兄がいとし、弟がこいしだと諭し教える喜味こいし。
  • 一件落着の暇もなしに背後で驚きの大声を上げて松崎真が座布団片手に横断歩道を渡ってやって来た。そこでビックリ、司会の三波伸介はジミヘンの霊を憑依させ、炎の反撃に出てみるものの、その時、呪文が轟いて、ジミの聖火は吹き去っていく。
  • その風とは、声を失った人魚姫・林家こん平の魂が起こしたものであった。その声と青春の日々を取り戻したいこん平は、形見の鈴の音とクロスロードの幻に、おのれの魂を彷徨わせれば、紳助バンドと家なき子の馬鹿さ加減が爆風を呼び込むカタストロフへ。
  • そこへ怪しき笛の調べと共に姿を現わすゴリラの落語家・鈴々舎馬風。お膳立てはムエタイのリング、酔拳操るバフーと思いきや、それは海を越えてやって来たミスターバズーカことハリー・リームズ。巨大ホースのリームズの消火は空しく、戦いの炎は巨大に膨れ上がる。やがて我を取り戻したこん平の眼前で会場は轟音と共に崩れ落ち・・・暗転。
  • そして数時間後、惨状の現場に一人の男がやって来る。「やん、バカ〜ン、フフ〜ン!!!」と口づさみながら。
  • さて、どうなるのか、佐分利信、風雲急を告げる第5話はまたの機会に。
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